TENDRE POISON ~優しい毒~
僕たちは近くのカフェでお茶をすることにした。
クリスマスイブという事であって周りはカップルだらけだった。
そのカップルに混じって普通の恋人同士のような、そんなそぶりでお茶を飲む。
何てことないことだったけど、すごく安心して幸せを感じたんだ。
アールグレイティーを飲みながら、向かい側の席で鬼頭がじっと僕を見る。
「さっきから女の人がみんな先生のこと見てく」
ちょっと面白くなさそうに唇を尖らせている。
それが何だか可愛かった。
「そんなことないよ。むしろ僕は男共から恨みがましい目で見られてる」
「何で?」
「何でって、君が可愛いからに決まってるでしょ?」
僕の言葉に鬼頭は言葉を詰まらせて顔を赤くした。
あ、照れた。
何だろう。すっごく可愛い。こんな顔もできるんだ。
鬼頭は照れ隠しのためか紅茶を勢いよく飲んだ。
「っつ!」
「バカ!何やってるの!?」
僕は思わず身を乗り出した。
鬼頭は口元を押さえてる。大きな目の目尻にほんの僅かだけど涙が浮かんでいた。
「火傷したぁ」
「大丈夫か?ちょっと見せて……」
いささか乱暴かと思ったけど、僕は鬼頭の顎を指で持ち上げた。
すぐ至近距離に鬼頭の顔があって、まともに鬼頭と目が合ってしまった。