TENDRE POISON ~優しい毒~
月の明かりが、鬼頭の漆黒の髪をつやつやと輝かせてる。
白い肌も、ぼんやりと滲んでいてフォーカスがかって見えた。
美しい……と思った。
この世のどんなものよりも。誰よりも。
鬼頭は輝いて眩しいほどだ。
鬼頭は光だ。
たった一つの光。
いつだって後ろ向きになると、鬼頭が僕を後押ししてくれる。
暗かった僕の心の海を映し出してくれる、たった一筋の輝き。
僕はいつの間にか鬼頭の元へ来ていた。
二人の影が砂浜にどこまでも伸びていた。
「先生ってば遅いよ」
鬼頭はむくれて唇を尖らせていた。
「ごめん、ごめん」
僕は笑うと、鬼頭の頭をそっと撫でた。
鬼頭はくすぐったそうに微笑みながら目を細めた。
彼女の笑った顔が好きだ。
照れた顔も好きだ。
怒った顔も、ときに無表情になるときも……すべて。
やっと
気づいた。
ううん。
本当はもうずっと前から惹かれていた。
でも僕は気づかない振りをしていたんだ。
まこに対する恋心じゃない。
彼女に抱くこの気持ちは……
強烈な欲望。