TENDRE POISON ~優しい毒~

白い建物はカフェでも民家でもなかった。


「“ペンション シーサイド”って書いてある」


鬼頭が白樺でできた洒落た立て看板を読み上げた。


「あ~、でもペンションって泊まるとこだよね?他いこっか」


と鬼頭がくるりと建物に背を向ける。



僕は無言でその腕を引っ張った。


「先生?」


鬼頭が首をかしげた。


「泊まっていこう……


って何言ってるんだろうね、僕は」


僕は乱暴に頭をかいた。



ホントに何やってるんだか。


若い頃……それこそ鬼頭ぐらいの歳だったら迷わず言っていた言葉なのに、今は厄介なことに分別も常識も備えた大人になってる。




いや、正直に言おう。



臆病になってるんだ。



歳をとった分だけ……





< 403 / 494 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop