TENDRE POISON ~優しい毒~
―――
「痛った……」
神代はあたしを腕の中に抱きながら、もう片方の手で器用に背中をさすっている。
「自業自得でしょ。あたしの痛みに比べれば大したことないよ」
あたしはちょっとむくれて布団を引き上げた。
とは言うものの、やっぱり思い切り背中を引っかいちゃったのはまずかったかなぁ。
―――だって痛かったんだもん……
「死ぬかと思った」
神代の腕枕で横になりながらあたしはぽつりと呟いた。
神代はあたしの怪我してる方の肩に負担がかからないように、そっと腕を動かしながらちょっと笑った。
「そんな大げさな」
あたしは白い天井を見上げた。
神代の部屋と同じ、まっさらな染みひとつない綺麗な天井。
そういう白さを見ると無性に赤く染めたくなるのはあたしだけ?
そう、まるで血の色のように。
「死ぬって同じぐらい痛いのかな?」
「何言って……」
神代はちょっと笑ったけど、すぐに笑うのを止めた。