TENDRE POISON ~優しい毒~

―――

3時間の補習授業は滞りなく進んだ。


鬼頭、もう学校に来てるかな?今頃図書室で勉強でもしているだろうか。


終わりを告げる鐘が鳴り、生徒たちが帰っていくのを見送り、僕も教室を出た。




教室の鍵を閉める為にジャケットのポケットに手を突っ込んだら、冷たい何かの感触を感じた。


まこのライターだった。


そう言えば返しそびれたんだ。


冬休みは部活もあるからまこも出勤している筈。





まこ、とはクリスマスイブ以来会ってはいない。


たった3日程なのに随分会ってない様に感じるのは気のせいだろうか。


でも寂しいとは思わなかった。


強烈に会いたい、とも。


鬼頭のおかげかな。



僕はちょっと笑った。


だけどシルバーのジッポライターに映ったその顔は、どこか歪んでいたんだ。




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