TENDRE POISON ~優しい毒~
「水月、あの女は普通の女子高生とは違う。
恐ろしく頭が切れてその上実行力がある。俺だってあいつの罠にはまったんだ。
容赦するな」
まこが冷酷に言い放った。
まこの言うことは正しい。
僕は今の今まで鬼頭に騙されてたなんて思ってもみなかったから。
そう言えばいつだってまこは僕に忠告してくれてたっけ。
全てが嘘に塗り固められていた。
最初から。
「偽りの愛……か」
僕は自分の手のひらを見つめた。
この手で抱いたのは、鬼頭の幻にしか過ぎなかったというわけだ。
「偽りなんかじゃない!」
ふいに梶田が声を上げた。
あまりに大きな声だったから僕を含むその場の3人が一斉に梶田を注目した。
「そりゃ最初はそういう目的であんたに近づいたかもしれない。でも、俺はあいつが好きだったからあいつばかり見てた。
でもあいつは
あんたばかり見てた」
「それは復讐するときを狙ってただけだろ」
と、まこ苛立ちながら前髪を乱暴に掻き揚げる。
「違う!
あいつがあんたを見る目は……
悔しいけど恋してる目だった。
俺の知らない“女”の目であいつはあんたのことをずっと見つめてたんだ!
あいつはあんたが好きなんだよ!ホントは心のどこかで復讐なんてしたくないって思ってる筈だ。
だからあいつを止めてくれよ」