TENDRE POISON ~優しい毒~


偽りの……愛。






「せんせい……」


鬼頭が僕を呼ぶ。


あるときは笑顔で、あるときは悲しい顔で。


泣いてるときもあった。


そう言えば鬼頭は一度も僕のことを名前で呼んでくれなかったな。





「先生、あたし今すごく幸せだよ」



でも、あの言葉を嘘だと思いたくない。


あの言葉が嘘じゃなければ、彼女は今きっと苦しんでる。





愛する者の命を奪おうとしている。



それがどれだけ罪深くて、悲しいことなのか。



僕には計り知れないけれど、その苦しみを救ってやれるのは僕しかいない。





僕しか。








< 433 / 494 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop