TENDRE POISON ~優しい毒~
~♪
ふいに誰かのケータイの着メロが鳴って、僕たちはそろって顔を見合わせた。
楠が慌てて制服のポケットからケータイを取り出す。
「もしもし」
電話に出た楠が電話の相手の声を聞いて、顔色を変えた。
「え!?乃亜が!!」
驚愕の色を浮かべて、目を開いている。
「分かった。すぐ行く!」慌てて通話を切ると、楠は乱暴にまこの腕を払った。
「乃亜の容態が急変した……」
僕たちは目を開いて、誰もが一瞬息を呑んだ。
「……急変したって、どうなったんだ?」
誰もがこの状況に最悪の事態を考えていたのだろう。中々その言葉を口に出せなかったけれど、その沈黙をまこが最初に破った。
「わかんねぇ。まだ詳しいことは……」
楠は顔色を青くしたまま、前髪をぐしゃりとかきあげた。
骨ばった大きな手が僅かに震えている。
それと同時に僕のスーツの中でケータイが震えた。
メール受信:鬼頭 雅
数学準備室で待ってます。
たったの一文。
これが何を意味するのかすぐに分かった。
決着のときが近づいている―――