TENDRE POISON ~優しい毒~
「まこ。楠を病院に連れて行ってくれ。梶田、君は家に帰りなさい」
「お前はどうするんだよ」まこが神妙な面持ちで僕を見た。
「そうだよ。それに鬼頭は?あいつはどうなる!?」
梶田が飛びつきそうな勢いで言った。
「僕は、鬼頭ときちんと向き合ってくる」
そうだ。僕は一度も彼女と向き合ってなかったんじゃないか。
彼女の心の奥に潜んでいる本心を分かっていなかった。
全てを知った今、彼女とちゃんと真正面からぶつかり合う必要がある。
「大丈夫なのか?」
まこは頭ごなしに反対をしなかった。
僕の気持ちを分かっているんじゃないだろうか。
「大丈夫。僕しかいない」
僕はまこを見て、それから楠、梶田の順に視線を巡らせた。
それぞれが猜疑心と不安の色の奇妙に浮かべていた。
「まこ、楠を頼むよ」
「ああ。水月、
気をつけろよ」
まこは怖いぐらいの表情を浮かべて、僕を見据えた。
まこ……
君と会うのはもしかしてこれで最後かもしれない。
君の声を聞くのは最後かもしれない。
僕の大好きだったひと……
さよなら。