TENDRE POISON ~優しい毒~

何種類もあるプリントの束をきれいにまとめてホチキスで止める。


簡単な作業だった。


パチン、パチンと機械的な音がするだけで、会話はない。


準備室はしんと静まり返っていた。


もともとあまり喋らない子なのだろう。


でも、こう沈黙が続くと正直息が詰まる。





「ねえ、今朝の……梶田とは仲がいいようだね。付き合ってるの?」


僕の質問に鬼頭は顔を歪めた。


「はぁ。ないない」


「そっか……、仲良さそうだったのに」


「仲が良い?やめてよね。一方的に付き纏わられてるだけだって」


まるで切り捨てるように言うそのさまに僕はちょっとびっくりした。


再び沈黙……





「先生こそ、彼女いないの?」


ふいにホチキスの手を休めて鬼頭が聞いてきた。


まっすぐにこちらを見ている。


鬼頭はいつだってそうだ。


人を喋るときはまっすぐに目を見てくる。





黒い吸い込まれそうな目でまっすぐ。



まるで捕らえるように。






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