TENDRE POISON ~優しい毒~
鬼頭を取り巻く邪悪な空気が変わった。
今なら説得できるかもしれない。止められるかもしれない。
「完璧だったの。あたしの計画は」
「うん……」
鮮やかとも思える程君は僕の中に入ってきた。
僕の気持ちを嵐のようにさらって、かき回した。
「ただ一つのミスを除いては」
「ミス?」
鬼頭はゆっくりと顔を上げる。
形の良いアーモンド型の目にうっすらと涙が溜まっていた。
「鬼頭……」
「あたしが……先生を好きになっちゃったってこと。本気で好きになった」
鬼頭は一筋の涙を流した。
それがとても綺麗で、不謹慎にも僕は思わず見惚れてしまったんだ。