TENDRE POISON ~優しい毒~
優しい毒……
床に放った薔薇の花束の花びらに混じって、神代の血が鮮やかに円を描いている。
神代も手を押さえながら、あたしの向かい側に座り込んだ。
下を向いているから表情が読めない。
「……んで…何で!邪魔なんかするの!」
「馬鹿野郎!!」
驚くほど大きな声だった。
空気をも裂くような、神代の悲痛な叫び声。
初めて怒鳴られた。
「……馬鹿野郎……自分が何をしようとしてたのか、分かってるのか…」
神代は俯きながら、とつとつと話し出した。
「せ……先生にはわかんないよ。あたしの気持ちなんて……」
「分からないね。分かりたいとも思わない」
低く唸るような声。
神代ってこんな声だったっけ……
「自分だけ死ぬなんて自分勝手な気持ち……僕には理解できない」
俯いていて表情が読めないけど、先生の細い形の良い顎が僅かに震えていて、そこから涙の雫が伝い落ちていた。