TENDRE POISON ~優しい毒~
「先生……」
「死んだら何もできないんだ。謝ることも、償うことも……何もかも。楠に悪いと思うのなら、何で生きて償おうとしない。
生きていること自体が君が彼女にできる唯一のことなんじゃないか。
楠の分も君が幸せになる。
それが償いなんじゃないか!!」
神代は怒鳴りながら、顔を上げた。
琥珀色の瞳から涙が溢れてる。
先生……
あたしは震える手で先生の頬にそっと触れた。
先生は血でべったりと濡れた手を、そっとあたしの手に重ねた。
「……か……逝かないでくれ。僕を……置いて逝かないでくれ」
涙が混じった声は途切れ途切れで、
だけどあたしの心にはそれだけで十分響いたよ。
先生……
ごめんなさい……
乃亜姉……
ごめんね。