TENDRE POISON ~優しい毒~
「雅……どこにも行かないで」
先生はあたしを引き寄せると、その胸の中にかき抱いた。
強い力……
決して離さないように、そう願いを込められてる気がする。
「……うん……先生を置いて……逝ったりしない。
先生、あたしの望みはただ一つ」
「……うん?」
「傍にいて」
あたしは泣きながら、先生の背中に必死にしがみついた。
初めて先生の心に触れた気がする。
初めて心で繋がれた気がする。
いつかの血で結ばれた赤い糸はちゃんと繋がってたんだね。
先生……先生―――
水月。
もうどこにも行かない。
あなたがいればどんな困難にも立ち向かえる。
そんな気がしたんだ。
だからこの手を離さないで。
決して。