TENDRE POISON ~優しい毒~
あたしは今神代と二人、タクシーに乗って乃亜の入院してる大学病院に向かってる。
「っつ……」
ほっとしたのか、今頃になって傷が痛み出したみたい。
神代は手のひらを押さえてる。
慌てて出てきたから、あたしのハンカチで応急処置をしただけだ。
深い傷じゃないから大丈夫、なんて神代は言ったけど結構血が出てた。
大学病院で手当してもらわなきゃ。
どの道急ぐしかない!
はやる気持ちを抑えようとあたしは神代の両手を握った。
彼もそれに応えてくれるように、そっと握り返してくれた。
タクシーの運転手さんが、あたしたちのただ事ではない雰囲気を見て顔をしかめている。
病院に着くと、あたしたち二人はもつれるようにしてロビーに駆け寄った。
入り口では保健医と梶が神妙な面持ちで、あたしたちを待っていた。
保健医はあたしたち二人を見ると、険しかった表情を緩めてほっと安堵したようだった。
梶に至っては、
「鬼頭!良かった。お前何もしてないんだな!」と走り寄って抱きついてきた次第だ。
え?何で?
何で梶がここにいるの?
抱きついてきた梶を引き離しながら、神代が梶を睨んだ。
「あんまりひっつくな。雅は僕のだ」
ドキン。どうしよう…不謹慎だけど、嬉しいよ。