TENDRE POISON ~優しい毒~
「先生……近くにいてね」
あたしは神代の手をそっと握った。
神代の温かい手が握り返してくる。
「いるよ。ずっと君の傍に」
ずっと……
トントン
あたしは扉を軽くノックして病室に顔を出した。
いつも見慣れたはずの病室が、今日は違って見える。
乃亜姉の眠っていたベッドの周りにおじちゃんとおばちゃん、明良兄が立っていた。
「雅……」
明良兄はあたしを見ると、ほっと安堵したように顔を綻ばせた。
「雅……?」
乃亜姉の柔らかい声。
忘れるはずがない。
ずっと……
あなたの声を聞きたいと思ってたよ。
ずっと……
こんな日が来るなんて。
あたしは顔を覆って、その場に崩れるようにしゃがみこんだ。