TENDRE POISON ~優しい毒~
◆午前6時のバスルーム◆
◆◆◆◆◆◆◆◆
一週間が慌しく過ぎ去った。
年末、年始もゆっくりと実家に帰ることができないほどに。
毎日楠の病院に、鬼頭と訪れた。
楠は
「先生ごめんなさい。心配かけて」
と言って何度も謝った。
「心配してたのは本当だけど、気にしなくていいよ。目覚めてくれたのならそれで」
楠は小さくふふっと笑った。
長い入院生活ですっかりやせ細ってしまった楠に、前ほどの笑顔がなかったのは仕方のないことだろう。
「雅も。ごめんね」
「いいよ。乃亜姉が無事なら、それで」
そう言った鬼頭の顔は、落ち着いていて優しい表情を浮かべていた。
万事うまく行ったようだ。
ただ一つ、謎を残して。
楠は何故自殺を図るときに僕の名を呼んだのだろう。