TENDRE POISON ~優しい毒~
鬼頭はしばらくうちで預かることになった。
驚いたことに、これを提案したのがまこだったということだ。
「あいつ心に暗い闇を抱えてる。カウンセリングの意味でもお前が傍にいてやるほうがいいだろう」
って。
確かに鬼頭は暗い闇を抱えていた。
しかし、楠の目覚めという出来事があって、すっかり元来の元気を取り戻したようだ。
元来の元気と言っても、僕の知る範囲だけど。
気がつくと、もう冬休みも明ける頃になっていた。
―――
「シャワー浴びてくる」
いつものように、鬼頭が髪をクリップで束ねて風呂の準備をしているところだった。
「ん」と何気なく鬼頭を見たけれど、その白いうなじが眩しくて思わず見とれた。
「お湯溜める?一緒に入ろっか」
鬼頭は最初無言で僕を見据えていたけれど、すぐに顔を赤くした。
「やだ」
て言うと思ったよ。
「でも鬼頭を一人にするのは……」
僕はわざとらしく考える振りをした。
「剃刀があるわけでもないし。大丈夫だよ。今更死にゃしません」
鬼頭はふいと顔を逸らすと、そそくさとバスルームに向かおうとする。
ピアスがぎっしり刺さった白い耳が、真っ赤になってた。