TENDRE POISON ~優しい毒~
可愛いなぁ。
あんなに赤くなっちゃって。
僕は鬼頭の行く手を阻むように、壁に手をついた。
「雅。一緒に入ろ?」
僕がやんわりと言うと、鬼頭は唇を尖らせてふいと横を向いた。
「先生って卑怯。そんな顔されたら、断れないじゃん」
卑怯?
そんな顔って、どんな顔?
ま、いいか。
鬼頭がその気になってくれたわけだし。
僕は上機嫌でバスタブに湯を張った。
―――
湯気が立ち込める狭いバスタブに二人重なるように、身を寄せた。
姉貴が送ってきたバスオイルをたくさん入れて。
薔薇の香りがする、とか言ってたなぁ。お湯が僅かにピンク色だ。
「いい香り♪」
鬼頭も上機嫌だ。そのことにほっとする。
「よっ」
と声を掛けて彼女の細いウエストを抱きしめて、引き寄せた。