TENDRE POISON ~優しい毒~
「だからさ、鬼頭が僕を殺そうとしてるって楠たちから聞かされたとき、応戦する自信はあったんだ。ただ、首固められたおしまいだなぁって……」
鬼頭は振り返って僕のほうを見た。
黒い瞳を興味深そうに目一杯広げている。
「首?もしかして落ちる(失神する)!?」
何故かわくわくしたように鬼頭が目を輝かせた。
余分なこと言ったかなぁ。
でも後の祭りだよね。
「昔さ、冗談半分で姉貴にマフラーでキュッと締められたことがあったんだよね……」
「落ちたの!?」
キャハハと鬼頭の明るい声がバスルームに響いた。
「だからネクタイあんまりしないんだぁ」
「……そうだね……」
僕は半目になった。こんなかっこ悪い部分何も自分から暴露しなくても……
「じゃぁ喧嘩したときは、迷わず締めるよ」
おっそろしいことを言う。
でも……
鬼頭の言葉はこれからの二人が末永く一緒にいられることを暗示している言葉だった。
「雅……ずっと一緒にいようね」
僕は彼女の白い首筋にちゅっとキスをした。
「うん。ずっとね」
雅は微笑みながら前を向いた。