TENDRE POISON ~優しい毒~
◆午前7時の雪◆
◇◇◇◇◇◇◇◇
冬休みが終わった。
長かったような、短かったような。
2週間の間に色んなことがあった。
初めて神代とデートして、初めて体が結ばれて、
復讐に失敗して
乃亜姉が目覚めた―――
2週間ぶりに登校する学校はいつもと同じ景色なのに、同じには見えなかった。
何だか目に映る全ての景色がきらきらして見える。
輝く景色の中で、梶の姿を見つけた。
大きな欠伸を漏らしながら、下駄箱から上履きを取り出している。
「でっかい欠伸」
あたしは梶の背後から声をかけた。
「ぅわっ!」梶はこっちがびっくりするほど驚いて靴を落とした。
「何だ鬼頭か……脅かすなよ」
「なんだ、じゃないよ。どうしたの?夜更かし?」
「昨日遅くまで兄貴と飲んでた」梶はふわふわと欠伸をしながら答えた。言葉尻が欠伸で途切れてる。
「……お兄さん?」あたしは片眉を持ち上げた。
「兄弟揃って失恋したから。うさばらしに」
梶が眠そうに半目であたしを見下ろした。
失恋……
キーンコーンカーンコーン
「鐘だ。始業式たりぃよなぁ」
あたしは梶の制服の裾を掴んだ。
「?」梶が不思議そうに首をかしげる。
「始業式、ふけない?」