TENDRE POISON ~優しい毒~
体育館の隣に球技場がある。
球技場には運動部の部室がいっぱい立ち並んでて、そのうちの一部屋が今は使われてないバレー部の部室になってる。
あたしたちはそこに落ち着くことになった。
「ほれ。あったまるぞ」
自販機で買ったホットコーヒーを手渡しながら、梶があたしの隣に腰掛けた。
「ありがと」
あたしがそれを両手で包むと、ほんわかと手のひらに温もりが伝わってきた。
何て切り出そう……
「梶、あのね……」
「事情は全部聞いた。楠先輩から」
明良兄から……?
「二年の楠 乃亜……先輩だっけ?そのひとのために…神代に復讐をするためにお前この学校に入ったんだろ」
「……うん」
「もともとあんまり自分のこと喋んねーし、どっか秘密を抱えてそうだとは思ったけど、まさかそんな事情があったとはなぁ」
梶は遠い目をしてぼんやりと言った。
あたしは俯いた。
手のひらのコーヒーはプルトップを開けることなくどんどん外気によって冷えていく。
「幻滅したでしょ」
あたしの言葉に梶はちょっと顔を横に向けてあたしの方を見た。
少しの間、梶はあたしをじっと見ていたみたい。
沈黙が重苦しい。