TENDRE POISON ~優しい毒~
「幻滅した……」
梶は前を向くとぼそりと言った。
あたしは目を開いて、埃が積もった床を見つめた。
そこに何かがあるわけでもないのに、じっと凝視してた。
「んなわけあるかってーの!」
勢い良く梶が振り向くと、あたしの肩にぽんと軽く手を乗せた。
あたしは梶の強い口調に引っ張られるように顔をあげた。
「そんなんで、幻滅するような男に見えるか?俺が」
あたしは無言で首を横に振る。
「むしろ惚れ直した……。
誰かのためを思って自分を犠牲にするなんて俺にはできねぇから」
あ、でも鬼頭のことは別だよ。俺誰かに鬼頭が傷つけられたら同じことするだろうし。
と梶は慌てて付け加えた。
「俺が思ってた通り。鬼頭 雅は情が深い女で……すっげー優しい」
梶……
何で……何でそこまであたしのことを想っててくれるの?
あたしは梶も裏切って、結局は神代と……