TENDRE POISON ~優しい毒~
◆午前8時の真実◆
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日々は穏やかに過ぎて行った。
気づけば冷たい風が、暖かく変わる三月だ。
鬼頭の傷は順調に回復していた。
まだ傷跡は残っているが、抜糸も終わって後は傷跡が消えるのを待つだけ。
僕たちは変わらず二人で仲良く(?)暮らしていた。
ベッドも買い換えたし。
まこ、とも普通の友人同士の仲だ。
あの激しい恋心はすっかりなりを潜めている。
楠 明良は見事第一志望の大学に合格。
この春から大学生だが、その前の羽伸ばしか、最近特にやんちゃだ。
よく生徒指導室で見かける。
もちろん楠 乃亜のことも忘れちゃいない。
彼女の病院には定期的に見舞いに行っている。
楠は順調に回復しているようだ。
ただ約一年間眠ったままなので、だいぶ体力が衰えているということで、いまだ車椅子生活を余儀なくされているのが、かわいそうだった。
だけど一ヶ月もすれば、もう普通に生活できる、と医者には言われている。
それぞれの思惑を、激しい感情をひた隠しにして日々が過ぎていく。
このまま、何もなかったかのように日々が過ぎていくと思っていた。
その日までは。