TENDRE POISON ~優しい毒~
~♪
「先生~、ケータイ鳴ってるよ」
リビングで新聞を読んでいたある休みの朝、鬼頭が起き抜けの格好で寝室から出てきた。
鬼頭は僕の白いシャツだけを着ている。
昨日の晩は……、まぁそういうことだ。
着信:公衆電話
「誰だろ?」
「公衆電話?」
鬼頭が僕の後ろから抱きつきながら、ケータイを覗き込む。
「先生、浮気してないでしょうね」
鬼頭がちょっと睨みながら低く言った。
「まさか!」僕はそんなに器用じゃない、と続けようと思ったけどやめた。
ピ
ケータイの通話ボタンを押して出てみる。
「……もしもし」
『……先生、あたし。楠 乃亜……』
少しの沈黙があって、楠の声が掠れるように聞こえた。