TENDRE POISON ~優しい毒~
なんだろう……
なんてあの場では言ったけど、僕には大体話したいことの内容が分かっていた。
楠の気持ちだ。
どんなことを思って、何で自殺しようと思ったのか。
ようやくその事実を聞くことになった。そう思ったんだ。
――――
楠の病室に行くと、ベッドは空だった。
「楠さんでしたら屋上の庭園にいると思いますよ」
僕がきょろきょろしてたからかな、通りがかった親切な女性看護士さんが、楠の居場所を教えてくれた。
「庭園?」
「ええ。患者さんの憩いの場として設けてるんです。今は薔薇が咲いてて綺麗ですよ」
看護士さんはにこにこ微笑んで、行ってしまった。
薔薇……
楠の好きな花だ。
何だろう。
心の中が妙にざわざわするのは。
これを嫌な予感、と言うのだろうか。
そう言えば似たような感覚をちょっと前に感じた覚えがある。
あれは鬼頭が僕に復讐しようとしていたときのことだ。