TENDRE POISON ~優しい毒~
◆午後8時の秘め事◆
◇◇◇◇◇◇◇◇
「送ってくよ」
神代は真顔で言った。
「は?いいし。一人で帰れる」
「そんなこと言わないでよ。女の子一人じゃ危ない」
「危ないってそんな時間じゃないし」
そう言ってあたしは廊下の窓の外を見た。
日が暮れて、暗い夜闇が広がっていた。
「いいから。あとちょっとで終わるからちょっと待ってなさい」
神代はそう言いおくと、さっさと職員室に入っていった。
意外に強引な奴。あたしはちょっとびっくりした。
でも優しい……
傘を貸してくれたときもそうだ。その優しさに裏側なんて微塵も感じなかった。
いや、でもそれが奴の計算かもしれない。
気をつけなければ。
それから神代が戻ってくるまで30分もかからなかった。
あたしは大人しく、神代についていく。
神代が向かった場所は職員用の駐車場だった。
決して広くない駐車にはまだ数台車が停まっている。
その中の一台、黒いエスティマに神代は近づいた。
どちらかというと小柄で華奢な体系なのに、車は以外にでかい。
「さあ、乗って?」