TENDRE POISON ~優しい毒~
「行くってどこへ……?」
鬼頭は人差し指を突き立てて、空を指した。
「ニューヨーク。両親のところで一緒に住むの」
「そんな話、僕は一言も聞いてないよ……」
「うん。わざと言わなかったの」
鬼頭はちょっと顔を背けると、乾いた笑みをこぼした。
そんな……そんな、笑顔を見たかったわけじゃない。
そんな悲しそうな笑顔僕は好きじゃない。
「水月……今までありがと。迷惑いっぱいかけちゃってごめんね」
水月―――って、また呼んだ。
だけど君が僕の名前を呼ぶときはいつも別れを意味してるよね。
「あたしね、男の人を好きになったの初めてなんだ。
辛いこともあった。泣きたいこともあった。
でも、ドキドキしたり、すっごく幸せ感じたりもしたんだ。
全部……先生が教えてくれたんだよ」