TENDRE POISON ~優しい毒~
鬼頭は目を逸らさずに僕をまっすぐに見据えてきた。
曇りのない、まっすぐな視線。
力強い何かを感じる。
いつも君はそうだったね。自分の気持ちに正直で、まっすぐだった。
「僕が行くなって言っても君は行くの?」
鬼頭はきゅっと唇を結んだ。
沈黙が訪れるかと思ったけど、鬼頭は口を開いた。
「言わないよ、水月は。だって優しいから。あたしの困ること言わないもん」
僕は鬼頭に歩み寄った。
大好きだったタンドゥルプワゾンが、すぐ近くで香る。
強く……強く。
僕は鬼頭を抱きしめていた。
強く。
強く―――