TENDRE POISON ~優しい毒~
「鬼頭の家ってどこ?」
あたしは場所を告げた。
「でも、駅の近くでいいです。自転車置いてあるから」
あたしは嘘をついた。
自転車なんて乗ってきていない。
でも、家まで送られたら、隣に楠家があるのがばれちゃうから。
「?家まで送るよ。ついでに、遅くなった理由を君のご両親にきちんと説明するよ」
どこまでも律儀な奴。
「いいって。うち両親いないし」
「いないって……?」
神代が顔をこちらに向けた。
信号は赤だった。
「うちの両親そろって海外勤務なんです。だからあたし一人」
神代はちょっと考えるように瞳を伏せると、
「そっか……、じゃあ一人で寂しいね」
は?
寂しいって、このあたしが?
何言い出すのこいつ。
それもこんなに神妙な顔して。