TENDRE POISON ~優しい毒~
「寂しくなんてないよ。だって一人のほうが気が楽だし」
神代はさらに眉を寄せた。
「一人が寂しいことなんてことないよ。人間誰しも」
随分感慨深げなことを言う。
でも、そんなこと言われたの初めて。
『雅は強いから一人で大丈夫ね』誰もが口を揃えて言う。
だから神代の言葉で何となく心がほぐれていく。
甘えたくなる。その手に縋りたくなる。
そんな考えをあたしは慌てて否定した。
「先生は一人ですか?」あたしは聞いた。
「僕も一人暮らしだよ」
「じゃあ寂しいですね」
あたしがそう言うと、神代はちょっと目をみはって、
「うん。寂しいな」
と一言呟いた。
こいつ……
意外と素直。
ここまでストレートに心のうちを見せてくれると、ちょっとこっちが怯む。
だって、あたしは隠し事がたくさんあるから。