TENDRE POISON ~優しい毒~
ふいに神代が前を向いたかと思うと、車が発車した。
夜のネオンに反射した神代の横顔は真剣そのものだった。
そういえば、車の運転がうまい。
滑らかに走っている。
車を運転する神代は先生の姿ではなく、一人の男で
どちらかと言うと柔和で中世的な顔立ちなのに、前を向く表情は真剣で男らしさを感じた。
意外にかっこいいかも……
しかも今まで想像してきた男と全然違うし。
本当にこいつが乃亜姉を騙して捨てた……?
はっとなってあたしは顔を戻した。
何言ってるの!
こいつは乃亜姉の憎き敵!
何かネタになるものがないかとあたしは車内をきょろきょろと見渡した。
車の座席は3列で、どこもすっきりと片付いていた。
ドリンクホルダーには缶コーヒーがあり、灰皿にはタバコの吸殻が残っている。
タバコ……吸うんだ。
灰皿のすぐ上にカーオーディオに繋がれたiPodに目がいった。
あたしがそのiPodを見ていると、
「音楽でもかける?」と聞いてきた。
あたしは首を振った。その代わり
「中見てもいい?」と聞いてiPodを手にとる。
「いいよ」
あたしはiPodの操作ボタンに指を走らせた。