TENDRE POISON ~優しい毒~
「先生の車って何か殺風景だね」
「そうかな?男の車なんてこんなもんだと思うけど」
「じゃあさ、あたしが可愛くしてあげる」
そう言ってあたしは鞄の中をまさぐった。
あたしだってそんな可愛いものを持ってるわけでもないけど。
「あ。これなんてどう?」
ケータイについてるスヌーピーのストラップを見せる。
首のところに花輪が巻きついてるアロハスヌーピー。
「どこにつけるの?」
「そうだね」
あたしは車内をぐるりと見渡した。
できればあたしがつけたということを思い出せるような場所……
「ここなんてどう?」
あたしはルームミラーを指差して、ついでにスヌーピーを付けた。
「それじゃミラーが見えないって」
神代は苦笑しながら、横を見た。
信号は赤だった。
スヌーピーが大きく揺れた。