TENDRE POISON ~優しい毒~

目的の駅につくまで沈黙が続いた。


あたしは沈黙には慣れてるから良かったものの、神代は始終そわそわしてた。


何か話しかけるべきだけど、話題が見つからない。


そんな感じだった。


それが、不自然にも思えた。





駅に着いてあたしが車から降りる。


「じゃあ……気をつけて」


「うん。先生もね」


「ありがとう。じゃ。」


短く言って神代は車を発進させた。


これで今日は終わり―――






だったけど……




「先生!」


あたしは走り出そうとする黒いエスティマに向かって声を投げかけた。


大声を出すなんて久しぶりだ。


あたしの声なんて聞こえないと思ってたのに、神代の車はキッと音を立てて停まった。


窓から神代が顔を出す。






「どうした?」






「また明日ね」




神代はちょっとはにかんだように笑って、車を発進させた。




また明日……復讐は続いていく。










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