TENDRE POISON ~優しい毒~
変なの……
あたしが想像していた神代はもっと女に対して酷い奴で慣れてるもんだと思ってたのに。
拍子抜け。
案外、あいつを落とすのは簡単なのかも。
いや、あの慌てぶりだ。逆にやりづらいかも。
なんて考えてると、
「よっ!」
と背後から声を掛けられた。
明良兄だった。
「お兄……」
昨日ぶりなのに、随分久しぶりに思える。
「今、車から降りてこなかったか?」
明良兄が怪訝そうに目を細めてる。
「うん。神代に送ってもらった」
「神代に!?何で!」
「何でって……成り行きで」
言ってあたしはさっきのキスを思い出した。
顔が熱くなる。
「お前!神代と何かあったのか?」
明良兄が勢い込む。
「別に……何も」
あたしは明良兄に一つ嘘をついた。
腕時計を見たら、夜の8時を指していた。
午後8時の秘め事だった。