TENDRE POISON ~優しい毒~
◆午後9時の部屋◆
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鬼頭の言った駅は僕の家の最寄り駅と同じだった。
家が近くだということは、言わなかったけどちょっと驚いた。
一緒に車に乗ってると、鬼頭の香りをより身近に感じて僕の胸は何故かドキドキした。
僕が緊張してることも露知らず、鬼頭はマイペースにマスコットをルームミラーにつけている。
スヌーピーのマスコットとは、女の子らしい。しかもピンクや黄色といったきれいな花が首元に巻き付いていた。
なんて考えてたら、スヌーピーで後ろが見えなくなった。
「それじゃミラーが見えないって」
僕は苦笑して横を見た。
折りしも信号は赤だ。
きちんと停車してから顔を横に向けると、彼女の顔が意外にすぐ近くにあってびっくりした。
こうしてみると、彼女は本当に美少女だった。
きめが細かくて透き通るような白い肌。
大きな、少しつり目がちの黒曜石のような黒い瞳。
桜色の艶やかな唇……
何故かその淡い色をした唇から目が離せなかった。
彼女の香りをより一層強く感じて彼女の顔が近づいてきた。