TENDRE POISON ~優しい毒~
まこの真剣な二つの目が僕を捕らえる。
僕はその黒い瞳から逃れられなかった。
視線を逸らせずにいると、
まこは呆れたように小さくため息を吐いた。
「あれほど気をつけろって言っただろ?」
「気を付けるもなにも、彼女はただの生徒だ」
僕は言い切った。
だって本当のことだし。
「たぶらかされてるじゃないのか?」
まこは前髪をくしゃりと掻き揚げて言った。
表情がちょっと怒ってる。
「たぶらかされるってどういうことだよ?彼女はそんなんじゃない。第一僕をたぶらかしたって彼女に何のメリットがあるっていうんだ?」
まこはキョトンとなった。
自分の発言に現実味がないことを悟ったようだ。
「そりゃ、成績をあげろとか……」
「彼女は僕に成績を頼むぐらい落ちぶれていないよ。現に僕の数学だっていつもトップクラスだ」
まこは面白くなさそうに唇を尖らせた。
「随分鬼頭の肩をもつんだな。
お前、鬼頭と何かあったんじゃないか?」