TENDRE POISON ~優しい毒~


梶に言われて、あたしは思わず俯いた。


やだ……


俯いたら、涙が……




「鬼頭……何があったんだ……?」



梶はあたしの手をそっと握ってきた。


暖かい手。優しい感触。


あの保健医とは違う手……




ふいにあの怖かった1シーンを思い出して、あたしはダムが決壊したごとく涙を流した。


梶はそれ以上何も聞かず、何も言わず、ただあたしの傍に居てくれた。


今のあたしはそれが一番ありがたかった。





―――結局神代の手伝いはいかなかった。


また明日何か言われるかな。


でも、神代には会いたくなかったんだ。





夜10時。あたしは、ごはんも食べず一人きりでリビングのソファにいた。


テレビもつけてない。音楽もかけてない。


無音の中で、携帯の音が鳴った。


~♪


着信:梶(ホントは梶田) 優輝



となっていた。








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