TENDRE POISON ~優しい毒~
鬼頭は肩にかけた鞄を直すと、
「ごめん。ずっと待ってったんだ?」
と素直に謝った。
まただ……
また、僕のことを否定しようとするくせに、素直になる。
「代わりに何か手伝うよ」
「え……いや……」
と言いかけて、
「やっぱ手伝って。二年生の宿題のレポート作成するのを」
「レポート?そんなことあたしにやらせていいの?」
そう言った鬼頭の顔はいつも通りで、僕は幾分かほっとした。
「二年生のだから、いいよ。手伝ってくれる?」
「うん、分かった」
鬼頭は静かに頷いた。
そのままくるりと踵を返す。
「待って!」僕はその後ろ姿に問いかけた。