TENDRE POISON ~優しい毒~


ビールの缶の脇に置いたチョコレートが今日のおつまみだった。


友人の海外土産にもらった、ブラックベリー味の珍しいチョコだ。


僕は甘党だ。


チョコやケーキなどの甘いものに目がない。


だけど甘いものは摂取過ぎるのも良くない。糖尿病になる恐れだってあるし。


と言うわけでなるべく摂らないようにはしているが、


たまの贅沢(?)だ。


大好きなビールとチョコ。すぐ隣には愛犬のゆず。最高の贅沢だ。



以前まこに、


「女みてぇ」なんて笑われたことがあったっけ。


まこのほうこそ、スルメやエイヒレなんかをつまみにしておやじくさいよ。




うそ……



そっちのほうがずっとかっこいい。


ずっと男らしい。




チョコをかじってると、ゆずが物欲しそうに僕の周りをうろうろ。


小さな前足をちょこんと僕の膝に乗せ、僅かに舌を出している。


「ごめんね。ゆずは食べられないんだ」


僕がゆずを抱き上げると、可愛いその顔に向かって申し訳なさそうに謝った。





TRRRR



ふいにテーブルに乗せたケータイが鳴って、僕はドキリとした。


ゆずをそっと下ろすと、テーブルの下でゆずがきゃんきゃん吠えてぐるぐる回っている。


ゆずなりに着信を教えてくれてるみたいだ。




ドキン、ドキン……


高鳴る心臓を押さえながら、ケータイを手に取った。






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