TENDRE POISON ~優しい毒~
「ターゲットを変える……」
ぼそりとあたしは口についた。
「ターゲットを変えるって誰に?」
明良兄がきょとんとして言う。
「それはまだ……考えるけど、神代に近づき過ぎてたのかもしれない。
とりあえずあたしが神代から離れれば、あいつ……保健医も何も言ってこないよね」
「そりゃそうだけど、ターゲットを変えたら本来の目的も変わってきちまうじゃん」
「ばかね。あいつの一番大切なものを苦しめてやるのよ。
自分が傷つくより、ずっと効果的じゃない?」
あたしは口の端で笑った。
明良兄が目を見開いて、ゆっくり瞬きする。
そして、ちょっと身を引くと顔を青くして、
「お前っって怖ぇな」
と呟いた。
「それはそうと、ちゃんと現場を押さえておいてよ」
あたしの言葉に明良兄は、パーカーのポケットからデジカメを取り出してにんまり笑った。
「おうよ」
神代の部屋に入るところを、明良兄にしっかり撮ってもらうんだ。
その写真をどうするのかはまだ決めてないけど、後々何かの役に立つかもしれないからね。
あたしだって、人を傷つけたくてやってるわけじゃない。
でもこれは復讐だから。
乃亜の―――恨みはあたしの恨みでもあるから。
あたしの計画はまだ始まったばかり。