花のかんむり
「よく、あるじゃない?
卵を割ったら、中が半熟ってヤツ。……ダメなんだよねぇ。」
ちゃんと火が通ってしまった卵が、そこに情けなく横たわる。
私は、ほとんどぼやきながら、スプーンでそれを掬って口へ運んだ。
そんな時、目の前の彼は改まって言った。
「どう思う?」
「何が?」
「これ。」
彼は、テーブルに小さな箱を置いた。
「なにそれ?」
「開けてみて。」
また失敗したオムライス。
卵はパサついてもいた。
だから、
うまく飲み込むことが出来ない。
スプーンを皿に置いて、小さな箱を手に取る。
私は躊躇なく、それを開けた。
「…………。」
「どう思う?」
「……どう、思うって?」
「セナ、結婚して。」
今夜は熱帯夜。
また失敗したオムライス。
小さな箱の中、
眩しすぎるハートのダイヤモンドを着飾ったリングが私を見つめていた。