花のかんむり
スカウトされて上京したのが、十五歳。
華やかな芸能界を夢見ていたけれど、
待っていたのは上手く行かない現実と途方もない孤独。
スーパーのチラシ、ドラマのエキストラ、またスーパーのチラシ。
この七年間で一番大きな仕事と言えば、
二時間サスペンスドラマの、始まって僅か五分で殺される名も無き女子高生。
つまり死体役。
挫折は何度となく、訪れた。
けれど、大きな事を言って実家を飛び出した手前、今さら実家にも帰れない。
その日食べるものにも困って、バイト先のコンビニで廃棄になった弁当をこっそり持ち帰る日々。
だから十八の時なんて、
とっくに諦めていた。
私の肩書きはモデルだったけど、成功したモデルではない。
そして、これから先も成功する可能性が無に等しいことを、とっくに知っていた。
そんな私とは対照的に、
遊は成功者だった。