獅子が招いてくれた恋
 
神楽衆…。
ずっと憧れていた。




笛と太鼓のおはやしだけで獅子を踊らす…。

ここ、藤宮(ふじみや)のお祭りでは獅子舞いの獅子は小学生たちに大人気だ。




風呂敷のような布と柄の胴体。

一本の木の幹から彫られた、漆塗りの大きな頭。

カプカプと動く、噛み合わせの立派な金色の歯。




頭から胴体へと綺麗に生え揃った銀色の毛。

その毛を揺らして舞う姿は迫力の影に美しさを隠し持っていた。




あたしはそんな獅子を操る笛を吹くおっちゃんたちに憧れていたんだ。






今まで男しか居なかった神楽保存会。

あたしは去年、その保存会の女神楽衆第一号になった。




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