獅子が招いてくれた恋
はるかside、調子のんな
「はるかー、ヘループ!」
「はるちゃーーんっ!」
急に聞こえてきたあたしを呼ぶ声。
横笛を吹きながらこの心臓破りの坂を登るのは、ぶっちゃけキツい。
ペチペチ草履を鳴らしても、せっかく登った坂はあまり下りたくない。
「はるかー!頼むっ。このままじゃ軽トラに持ってかれちまうよ〜」
まこちゃんの情けない声も、なんとなく聞こえた。
辛い時こそ担ぎ通す。
どんなにしんどくても、すぐ近くを走っている“いざという時のための軽トラ”に御輿を乗せるのは絶対に嫌だ。
藤宮っ子のプライドが許さないのだ。
「行ってやれ、はるか」
お神楽のおっちゃんたちが言った。
「おい、はるか!今にも潰れそうな子供御を輿煽ってやってくれ!」
「そうだ、情けなくて俺たちまで気持ち良く担げねえ」
大人御輿の藤宮連のおっさんたちにも言われた。