獅子が招いてくれた恋
『意外な特技ですね、太田さん』
「丘工の友達に家が寺のヤツが居てさ。教わったんだ」
帰り道、般若心経を教わりながら歩いた。
神社の近くを通るとまだ賑わっている。
『かわいそー。大人は風呂、子どもは学校行きたいだろうに…』
祭りのメイン会場は藤宮小学校の校庭。
って言っても、藤宮にはそれ相応の場所が小学校しかないんだけどね。
「俺っちは早く帰って、風呂入って、学校行くべ」
『だねー』
その後はテキトーにいろんな話をした。
藤宮から甲子園球児が出た話とか。
丘工の応援団の話とか。
来年の祭りの豊富とか。
『そう言えばまこちゃんちどこ?』
気付いたらもうあたしっちの住んでる組。
矢部家はこの組の一番奥にある。
「うちはここ」
『ここだったんだ…』
意外と初めて知ったまこちゃんち。
『へー…。じゃあまた後でね』
送るよ。とか言って付いてきたまこちゃん。
まこちゃんちからうちまで、200メートルってとこかな?
こんな距離送られてもな…
なんて考えてたらケータイが鳴った。
お母さんからだ。
「もしもし、はるか?今おばあちゃんとこ着いたからね。入れ違いだね〜。玄関閉まってるからお父さんと帰ってね!」
ブチッ―――
いつもの如く、言いたいことだけ言って切られた。