獅子が招いてくれた恋
まこちゃんは“やっちまった〜”的な顔をしている。
チッ、と舌打ちをした。
「こんななぁ、足腰ぼろぼろのおっさんじゃなくてよ、彼氏連れてこい彼氏!」
『あー…、来年できてたらね』
言葉を濁すしかなかった。
高1の時に付き合っていた彼氏のことが、どうも忘れられなくて、これから1年以内に男を作れる自信がない。
別れてから2人付き合ったヤツが居るけど、そいつらとはすぐ別れた。
『まこちゃんこそ、彼女連れてきて女御輿担がせろよっ』
「いや、あんなの担がせたくない。彼女の前に俺がへばるし」
まこちゃんはこっちを向いていやらしくニヤついた。
あたしも負けじとニヤついてやった。
30分くらい経った頃、道の向こうででっかい影が揺れた。
お父さんだ。
『あぁ!お父さんっ、鍵持ってる!?』
「何?締め出された?」
面倒だからまこちゃんは放置。
そしたら、
「お疲れ様ですっ!」
なーんて言ってきて、お父さんも
「あー、お疲れ様。どこの子?」
なんてあたしに聞いてきた。
『まこちゃん。太田さんちだよ、』
て言うとすぐに反応して、2人でまこちゃんのお母さんの話をし始めた。
まこちゃんのお母さんとうちのお父さんは小・中学校で同級生だったからよく知ってるんだってさ。
ちなみにまこちゃんのお母さんの実家も、うちのお父さんの実家ももうないんだよね。
道だか橋だかダムだか埋め立てだか。
よく分かんないけど、それの関係でこの組の人たちは立ち退いて、藤宮の隅っこに移住してきたんだって。
あたしも4才まではそこの住人だった。