獅子が招いてくれた恋
「はーい次、洗剤。〇〇組、山田さーん」
祭典メイン会場、藤宮小校庭。
ハゲ頭にハチマキをしてけんさんが抽選会の司会をしている。
「〇〇組の山田さん、居ない?はい失格〜。じゃーあ…」
矢部家はさっき、お母さんの勤めているスーパーの商品券が当たった。
「よーし、お次はこのビール券。みんな欲しいよねえ」
おっさんたちが盛り上がる。
おばさんたちは米を早くよこせと笑いだす。
抽選会は着々と進んでいった。
ヴゥ〜
まこちゃんから電話だ。
あたしのケータイは万年マナーモード。
学生なんてそんなもんでしょ?
電車乗って学校行って、授業受けて、部活して、電車乗って…
『もしモしっ、お疲れさま〜』
「おう、ご苦労。変な発音してんなよ」
部活で流行ってるアクセントでつい受けてしまったのがバレた。
『まこちゃん、今どこに居んのさ?抽選会今ビール券だよ』
「いい、うち飲めるヤツ居ねえから。…って、お前もう学校に居んのか?」
ここに来て10分も経ってない。
「な〜んで先に行っちゃうのさー?」
『え、一緒に行くなんて言ったっけか?』
「流れ的にそうだろ、流れ的に!1日共に汗を…」
あ〜
面倒臭いかも…
プチッ―――
『あ、やっちゃった…けどまあいっか』
つい。本当についつい、切ってしまった。