獅子が招いてくれた恋
電車から一緒だった3人とは教室が違うから、校舎に入ったらすぐばいばい。
『おはよ』
ここは電気科の教室。
「うーすっ」
「はよっす」
いつもと変わらない朝のメンバー。
傘野球組と通信ゲーム組。
『このくそ暑いのに。朝から元気ですこと…』
窓側の席にカバンを置いて、桟を背もたれにして座った。
こうすると教室全体がよく見える。
窓側、前から4番目の後ろから3番目。
矢部でよかった。
「元気ですともーっ!」
バッターをしていた奴が叫んだ。
「思春期の男の子はね、朝は特にゥゴ…ブ…」
朝から下ネタは、と言わんばかりにピッチャーが口を塞いだ。
「つーかお前ら宿題は?」
隅っこで必死に夏休みの課題と戦ってた奴が突っ込んできた。
「「後で写す」」
ピッチャーとバッター、揃って親指を立てた。
対抗してあたしは
『終わった』
と、親指を立ててやった。
その瞬間、2人揃って手を出してきた。
どう考えても写させろ、と言う意味。
彼らと同じ教室で過ごして2年半。
よくある、慣れたお話。
『ジュース1本ずつね』
「「あざっす!!」」
よくある、いつものやりとり。