獅子が招いてくれた恋
ヴゥゥー、ヴゥゥー―――…
電話だ。
『…はいー、もしモし!お久しぶりっ』
相変わらずこの“もしモし”がやめられない。
部内で流行っていたのが、気付いたら3年生の男子の半数以上が愛用してるんだとか。
「お前、今どこよー。学校?」
『そだよー、今から校門出る』
相手はまこちゃんだ。
「俺さ、近くに居るんだ。」
『は、ストーカー?』
「違うわ!まあいいや、拾ってやろうか?」
拾ってくれるのか…。
駅まで歩くの面倒だし、ちょうどいいかも。
でもあたしは家から最寄り駅までは原付で通ってる。愛車を駅に放置したくない。
それに…
『いいや、ツレが居るからまたの機会にお願いする』
ハルミ、こいつは中学から一緒。
1人で帰らせるのもアレだしね…。
それに、ガールズトークだってしなくちゃ。
それにそれに、ハルミだって地元の駅からは原付で帰る。
電話を切った。
「ハルカぁ!?んんーっ?」
ハルミが親指を立てながらにんまりした。
あたしも真似をして、それに小指を加えて手首を振った。
流行りの保険会社のCM、”ティンティロティン♪“だ。
「ちげーし、ばーか!男かって聞いたんだ…よっ!!」
“よっ!!”で肩に物凄い衝撃が走る。
ハルミの張り手はどこに当たっても強烈なんだ。
『はいはい、男ですよ。近所の人だけどね。近くに居るから拾おうか、だってさ〜』
「なーんだ、つまんない!ハルカに1年ぶりに男の気配かと思った」
男…ね。
まこちゃんが!?
ナイナイ。
ちなみに“ルカ、ルミ”は生徒会だけでの愛称。
ヴゥッヴゥッ…ヴゥッヴゥッ―――…
今度はメール。
“気を付けて帰れよ。
面接はどうだったんだ?結果きたのか?
報告ぐらいしなさい!!”
あ、報告忘れてた。
歩きながらテキトーにメールを返して、ハルミとのガールズトークに熱を入れた。
まこちゃん、か…
悪くないかもね、お兄ちゃんみたいな年上も。
〈はるかside、意識〉